薮原駅内の切符売り場でこれから行く鳥居峠の地図をもらう。鳥居峠は旧中山道の薮原宿と奈良井宿をつなぐ峠道で難所のひとつであったそうだ。現在、鳥居峠は新鳥居トンネルが抜け難所ではなくなっている(自転車にとっては難所だが…)が道は他にも山を越える旧国道と旧中山道である信濃路自然歩道が残っている。僕がこれから向かうのは旧国道である。ここは2006年以来3年振りの再訪だ。
駅前からこじんまりとした薮原宿を抜け舗装の急坂を上り詰めると森の中に入り道は未舗装路になる。
ダートになってすぐ旧国道とは別に旧中山道の石畳が残る区間がある。せっかくなのでここは自転車を押して江戸時代に馬や徒歩でここを通った人々に思いを馳せながらゆっくりと歩く。
石畳区間を終えると後は1車線の狭い未舗装路が続く。森林の中の静かな道。勾配は緩く坦々と走る。展望もあまりないまま峠に着く。くま注意の看板があり落ち着かないので先を急ぐ。奈良井側に少し行くと建物がある。茶屋とあるが休憩所である。水場があり眺めもよい。
長い坂を下ると奈良井宿に着く。奈良井宿は国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されていてメインストリートは往時の町並みが残されている。以前ならテントを張って野宿というパターンなので落ち着いて町歩きなど出来なかったけど今回は宿に泊ってゆっくりするのだ。
宿は飛び込みではまずいかなと思い観光案内所を通して予約した。1泊2食付き7500円でいくつか選択肢があったが良し悪しは分からないので民宿しまだというところを取ってもらった。今日は連休最終日でどこも空きがあったようだ。
宿へ行くと話し好きのおかみさんが出迎えてくれた。自転車は裏の駐車場に入れて部屋に案内してもらう。二階の六畳間だったかな?冷房がなくてまだ暑いからと隣の広い部屋でお茶とお茶菓子をいただく。そしておかみさんの話が止まらない。しきりに観光を勧めてくれるが少しは休ませてくれー。自転車の旅はそんなにギチギチにスケジュールは詰め込めないんですよ。バスや電車の旅行は着いてからが勝負!なのかもしれないが自転車は移動そのものが楽しみだから宿に着いたら一息つきたいのですよ。
なんとかおかみさんに解放してもらい休憩の後カメラを持って散歩に行く。しかし話は長かったが食事の時間や場所、お風呂の在処やチェックアウトの時間等々宿の基本的な情報は何一つ教えてくれてないではないか!なのでこっちから話を振って夕食の時間とトイレ、風呂の場所は聞き出しておいた。
ペンタックスのK-7に24㎜と50㎜の単焦点2本を持って町を散策。デジイチだと50㎜で町並みを切り取っていく感じが面白い。以前フィルムだと枚数に限りがあるから広角で多くの情報を写しこもうとしていたような気がするがデジタルの何枚でも撮れるという気安さからかやや望遠寄りの画角で切り取っていくという感じが新鮮である。
午後5時を回ると店が閉まりだし軒先に並んでいた土産物がなくなると通りが少しさみしくなる。遅くまでやっている居酒屋などはこの町にはなさそうで食事は宿で取るほうがよさそうだ。夕食は6時からなので戻る。今日の泊り客は僕を入れて3組、他の2組は中年の御夫婦。どちらも愛知県から。少し若い方の御夫婦は息子さんの車で旅行のはずが車のトラブルで急遽電車に乗り換えここへは飛び込みだそうだ。そしてもう1組のやや年配の御夫婦の奥様は本籍地が岡山の門田屋敷(BPSなかやまのある京橋のすぐ近く)とのことで話が弾んだ。
食事は大変豪華。普段キャンプで自炊に慣れきっているので宿の夕食というのはすごく新鮮である。普段から宿泊まりの人にとっては当たり前の食事なのかもしれないが写真に写っている物の他にてんぷらと馬刺しまで出てご飯は食べ放題だしさらに明日の朝食まで付くのだからほんとに7500円でいいの?、元は取れるの?とやや興奮してしまった。
夕食後ささやかな花火大会があるとのことで歩いて会場の道の駅の広場へ行く。町中の人が集まってきているようで賑やかだ。でも夜店などは一切なく手作り感のある良い花火だった。全く予期していないイベントだったのでより楽しめた。やっぱ旅はいいなあ。
ぶらぶら戻ると町の通りではもっとささやかな玄関先の小さな花火大会がいくつも行われていて通りがかりの旅行者の目を楽しませてくれる。そして宿の土間にロードバイクがとめてありこれまたいい雰囲気。
部屋に戻り昼間買っておいた地酒を飲んで就寝。