MAVICサポートカー同乗レポート(国貞)


BPSなかやま スタッフ国貞 淳
2009年6月28日(日) 晴れ
場所 広島県中央森林公園
大会 第12回自転車全日本選手権 男女
 当日早朝に岡山の自宅を出発。6時半には現地に着いた。すでに選手や関係者の方々がたくさんいて午前8時からの女子のレースに向けて準備をされている。表彰台の隣にMAVICのテントがありそこでしばらく待っていると映像等で見慣れた黄色いMAVICカーとオートバイが登場。スタッフの方々に挨拶をし説明を受け黄色いスタッフ用Tシャツを受け取る。これを着ると一般の方からは僕がMAVICのスタッフに見えてしまうわけで少し緊張、有名女子選手が次々に受付にやってくるが写真は控えめにしておいた。
 MAVICスタッフの作業を見学。コンプレッサーを使ってホイールのタイヤにエアを入れていく。エア圧はコース状況や天候等に応じて決めるそうだ。ホイールは新旧のキシリウムエリート、SL等、タイヤはパナレーサーだった。準備の整ったホイールはバイク、車、テント脇とに分けていく。使用する可能性の高そうなものから取り出しやすい所に積んでいく。車輪の並び方、クイックレリーズをどっち向きにするか等積み方ひとつとっても意味があるのだ。そして印象的だったのが車内に積むホイールだった。使い古した手作りっぽい専用治具をつかってクイックレリーズの開き具合を調整している。レース中ホイールを変えたときにクイックの調整をしていたのではタイムロスになる。だから積む時に調整しておくのだ。当り前の作業かもしれないけど実際に一本一本丁寧に作業されているのを実際に見ることができたのは興味深かった。
 さていよいよ女子のレースが始まる。最後のトイレに行き酔い止めの薬を飲む。MAVICからはサポートカー2台とバイクが2台の計4台が走る。乗せて頂くのはレースの先頭をフォローするサポートカー、スバルエクシーガの助手席だ。一緒に乗るのはドライバーと後部シートにメカニックが1人。メカニックの方の作業最優先で助手席のシートは一番前、狭いがそれは当然のことである。気を使ってもらい背もたれだけ少し倒させてもらった。無線は2台積んである。審判者や本部とも繋がっているオフィシャルのものとMAVICスタッフ間でやり取りする専用のものの2種類だ。これらを駆使してレースの状況を把握して素早い的確なサポートを行うのだ。
 午前8時、女子のレースがスタート。1周12.3Kmのコースを7周回する86.1km。まずは下り坂、ここを時速60km/hオーバーでかっ飛んでいく。選手に追いつかれないためだかスピード感がすごい!ドライバーを担当している早川さんは無線片手に余裕しゃくしゃくで運転されているので不安はない。その技術の高さのためか心配していた車酔いは全くなかった。下りで飛ばして上りはゆっくり、見通しのよい橋の上などでは止まってレースの進行を確認して走り出すこともしばしば。ゴール近くはたくさんの観客の中走るのでレースをサポートしているという実感がわくが他の場所では無線でレースの状況は分かるものの選手が見えるわけではなく坦々と走っていく。スタッフの方には申し訳ないが眠い。睡魔との闘い(すいません時々負けました)である。
 さてレースだが途中から選手が一人逃げて集団は暑さのためかスピードが上がらずどんどんとタイム差が開いていく状況になっていった。逃げが出来て集団とのタイム差が開いた場合逃げの後ろに1台サポートがつかねばならない。どのくらいのタイム差で後ろに入るのかはレースに使われる道路の状況でその都度違うようで今回のコースは道幅が狭く選手が車を抜くところがあまりないため30秒以下でオートバイ、それ以上で車というのが決まりだそうだ。
 無線での指示もありいったん車を止めて逃げの選手と審判車を先に行かせて後ろに着く。初めて選手の走りを見ることができた瞬間だ。無線ではコース上の多くのポイントでタイム差を計測しその情報が伝わってくる。そして選手のスピードや調子の具合、インナーギアでゆっくり走っているとかものすごいペースで追い上げている等のサポートに必要な細かい状況も伝わってくる。タイム差は無線で流れたあとすぐに専門のバイクがすっと上がっていき黒板や直接声で逃げている選手に伝えられる。つまり無線の情報こそ、そのレースの最新情報なのである。
 1周回逃げの選手の後ろに着いたあとタイム差が縮まったため再び前へ出て先頭へ、そして大きなトラブルもなくラスト1kmになる。ここからはサポートは禁止なので僕らの仕事もここで終わりです。と早川さんの説明。優勝は西加南子選手。喜びと疲労で倒れこむ西選手に報道陣が群がる。
 休む間もなく男子のレースの準備に入る。カンパニョーロ11sのリアホイールを数本積みこむ。トイレに行き車に乗り込み11時レーススタート。男子のレースは16周回の196.8km。昼食を食べる暇もない慌ただしいスタートになった。男子のレースは女子に比べ出走者の数ははるかに多い。しかしこのコースではチームの車は走れないためMAVICのサポートはより重要になってくる。
 レースはスローペースで進行、再び睡魔が襲ってくる。昼食がとれなかったので走りながらスタッフの方も食事。選手の補給はスタートゴールのメインストレートで行われるが一緒に走っている車へのサポートも行われている。後部シートのメカニック担当の方がゼリーやドリンク等の補給職を役員の方から受け取る。オートバイから無線が入りボトルを渡したり食べたゴミを受け取ったりとMAVICスタッフ間でのサポートもあった。
 集団後方ではパンクや落車がありサポートの動きがあったようだが前方では動きはなくやはり女子のレースと同じく坦々と走る。レースはやがて逃げが決まりシマノと梅丹の2選手がどんどんタイム差を広げその差は3分を超えた。しかし本部や審判者から前へ出ろという指示はなくMAVICスタッフ同士の判断で確認を取りオートバイがレース前方、そして車は逃げの後ろに着いた。並んで走っていたシマノのサポートカー(チームではなくオフィシャルの)のドライバーに直接話しかけ後ろに下がってもらう。急ぎの用事は無線ではなく生声の方が速いし確実だ。レースでは指示がすべてではない。その場その場で状況を判断し行動しなければならないのだ。
 何周回か逃げの後ろに着いていたのだが急坂の上りで梅丹の選手がアタック!シマノの選手を引き離し単独で逃げ始めた。我々の車は遅れたシマノの選手に阻まれて先に行けない。緊張感が車内を駆け巡る。何とか追い越し猛スピードで先頭に追い付き逃げた選手の後ろへ着く。その後は落ち着き最後まで先頭を走る。レースは何度もアタックがかかり有力選手ばかりの逃げが出来てゴールはスプリント勝負になったのだがタイム差が30秒以上付かなかったりパンク等のトラブルがない限り車は特に動きようがない。そのままゴールラインを越えて急いで車を降りゴールスプリントを見る。優勝は西谷泰治選手。
 今回、私が乗せて頂いたMAVICカーが直接選手をサポートするシーンは一度もなかった。さらに選手が走っているのを見たのもたったの2周回のみであった。乗っていただけの立場から言うと残念、である。が選手、そしてスタッフの立場からすると良かったのである。最善の準備をして何事もなく終わる。それに勝ることはないと思う。レースは選手と観客だけではなくたくさんのスタッフ、役員、関係者によって運営されている。おそらくみなさん自転車、そしてロードレースが大好きな人たちばかりだろう。しかしそんな中現場にいてもレースを全く見ることもなく裏方に徹する人たちがいるのだ。そんな仕事の一端を垣間見ることができたことが今回の体験の一番の収穫である。ありがとうございました。

1件のコメント

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     貴重なレポート興味深く読ませてもらいました。
    詳しい話をまた聞かせてください。生写真も見せてネ。

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