未舗装路の魅力はより深く自然、大地を感じられるところではないでしょうか。
今、未舗装路といえばほとんどが林道という形態になるかと思います。林業のための作業道というのが林道の本来の立ち位置なのですが集落間を繋ぐ峰越林道は地域の生活を支える道でもありサイクリングに適した道でもあります。
これから越える奥大野越えが古くからの生活、物流の道だったかは不明ですが長沢方面に抜けることができる道です。路面には砂が入り工事車輛で踏み固められて走りやすいのですがタイヤによく食いつき足取りは重たいです。ゆっくりと上って行きます。
植林地帯を抜けると明るい広葉樹の森になりました。葉がだいぶ落ちているようですがそれでも美しい紅葉に足が止まります。
秋晴れの高い空。峠はもうすぐです。
峠の手前から南側の視界が開け周囲が一望できます。自分の足で上ってきただけに達成感もひとしお。しばし見とれます。やや霞んでいますが遠くに太平洋が見えているはずです。
峠は標高910m。切通しの峠は風の通り道でもあります。冷たい風が吹き抜け思わず身震いしてしまいます。峠の北側の空は厚い雲に覆われ期待していた瓶ヶ森など石鎚山系の山々は見えませんでした。
峠を出発したのが午後2時30分。当初の目的地である白猪谷のキャンプ地まで約30キロ。ほぼ未舗装のアップダウンが続きます。11月前半の今、日没は午後5時です。あと2時間半で30キロ。ロードで舗装路ならなんてことはない距離です。太いタイヤとサスペンションのMTBでキャンプ装備がなければこれも問題ない行程でしょう。ですが今は38ミリ幅のタイヤを履いたドロップハンドルのツーリングバイクです。下りはそんなに飛ばせません。それに今朝輪行時にチューブを1本ダメにしたので予備のチューブもありませんからより慎重に下らねばなりません。
もし目的地に行く道しか他に選択肢がないなら行くしかない!食料は持っているから沢で水を汲んで空き地でキャンプして翌早朝には出発だ!となるのですが幸い?にしてエスケープルートがいくつかあります。そちらも視野に入れて走り出しました。
峠から数キロは下りにならずだらだらと平坦な道が続きます。紅葉はきれいですが距離が稼げないのでイライラが募ります。そしてやっと下りになったと思ったらドサッ、と小さな音が後ろから聞こえました。止まって振り返るとシートポストキャリアの上の荷物が落ちています。崩れたのではなく振動でずれて1つだけ外れて抜け落ちています。荷を拾って荷造りしなおしてまた下ってしばらく行くとドサッ。どうも根本的に積み方(縛り方)が悪いようです。今回はGWの九州ツーリングの時と同じく太いゴムひも2本でばってんに縛っていたのですがどんなにきつく縛っても未舗装路の振動でずれてしまうようです。九州では全く問題なかったので過信していました。
実は予備のチューブもない状態で翌日走れるかも分からない未知の林道へ行くのは不安だったので言い方は悪いのですがこれで走らなくていい理由が出来ました。行かなくてもいい大義名分が自分の中に出来たのでホッとした、というのが正直なこの時の気持ちです。何度も荷物が落ちる今の状態では翌日のコースは走ることは出来ないでしょう。自分でコースを決めてそこへ行けなくてホッとするというのはなんか変なんですがちょっと計画に無理があったという事なんでしょう。
それからあとは予定ルートは止めて最短で国道へ抜けられるルートに変更して慎重に下って行きました。自分自身に対する後ろめたさ、情けなさは若干あるものの気持ちは楽になっていました。
その5へつづく